免疫にかかわる器官・病気

【免疫にかかわる器官】
リンパ
脾臓
白血球
炎症とは?

【免疫にかかわる病気】
アレルギー
気管支喘息(ぜんそく)
蕁麻疹(じんましん)
アナフィラキシーショック
アトピー性皮膚炎

免疫にかかわる器官

免疫とは?

生体には、常に正常な状態を維持しようという働きがあります。
何らかの原因で体温が下がれば、体温調節機構が正常な体温に戻そうとします。
もし体の中に病原菌やウィルス、外界の異物が侵入してくると、生体は正常な状態を維持できなくなる可能性があります。
物理的、化学的に異物の侵入を防いだり、やっつけたりする防御機構を、免疫と呼びます。

リンパ

血液は心臓から血管を通って全身を巡り、また心臓に帰ってきます。
血管はどんどん枝分かれをして、末梢では毛細血管となります。
血液(血管)の流れ:心臓→動脈→毛細血管→静脈→心臓へ
そして、毛細血管から細胞と細胞の間に水分(組織液)がにじみ出て、その組織液を介して酸素や栄養素などの物質交換が行われます。
組織液の大半は静脈に回収されますが、10%ほどはリンパ管に回収されます。
これがリンパ液の源流となります。
リンパ管は、血管(血液循環)とは違い、復路(心臓へ戻る経路)のみの循環となります。
そのため、血管は上水道、リンパ管は下水道に例えられます。

リンパの役割は?

細胞と細胞の間には組織液があり、その一部は静脈に再吸収されずに残っています。
この組織液には、細菌やウィルス、異物などが含まれていることもあり、そのままだと組織液が汚れ、生体の感染の危険が生まれます。
そこで、その組織液を、リンパ管が吸収します。
毛細リンパ管は静脈に沿って、レース編みのように張り巡らされています。
リンパ管は細菌、ウィルス、異物などを、余分にある組織液ごと吸収します。
このようにしてリンパ管に吸収された液体がリンパです。

リンパ節の役割は?

リンパ管の途中のあちこちには、リンパ節があります。
全身に数千個のリンパ節があります。
リンパ節は、リンパ液をチェックする関所のようなもので、リンパ液を濾過しています。
リンパ節には貪食細胞とも呼ばれるマクロファージ(白血球の一種)が存在し、リンパに入り込んだ細菌やウィルスを食べつくしてくれます。
また、白血球の一種のリンパ球がリンパを調べ、細菌などに対して抗体を作って攻撃します。
リンパ節のように、リンパ球を作ったり侵入してきたウィルスをやっつけたりする働きをする組織は、脾臓、胸腺、扁桃などにもあります。

脾臓

脾臓は空豆のような形をした臓器で、左上腹部のやや背中側にあります。
脾臓には様々な働きがありますが、免疫機能が特に重要です。
脾臓は白血球のリンパ球のうち、抗体を作るBリンパ球を成熟させます。
Bリンパ球は、ある外敵(ウィルスなど)の情報を受け、その外敵だけに作用する抗体を作ります。
脾臓には他にも、造血、古くなった赤血球の破壊、血液や血球の貯蔵といった役割もあります。
赤血球は骨髄で作られますが、骨髄の機能が著しく低下した時は、脾臓が赤血球をつくるようになることがあります。

白血球

白血球は血液中、リンパ節、脾臓、その他の全身の組織にもいます。
白血球は身体に侵入する外敵(ウィルスなど)を撃退する免疫機能を持っています。
白血球は5種類あり、それぞれ好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球と言います。
血液中に最も多いのは好中球で、白血球の60~70%を占め、次に多いのはリンパ球で、全体の20~30%です。
白血球はいずれも骨髄(造血幹細胞)で作られます。
リンパ球は骨髄を出た時は未熟な状態で、胸腺で成熟するものをTリンパ球、脾臓などで成熟するものをBリンパ球といいます。
好中球、単球(マクロファージに変化)は、侵入する細菌などを食べて殺します。
好酸球、好塩基球は数が少なく、働きはよくわかっていません。
リンパ球は免疫の司令塔として他の白血球に命令を出したり、抗体を作るなど、免疫システムの中心的な役割を担っています。

白血球の貪食作用

細菌感染などの異常があった時、真っ先にかけつけるのは好中球です。
また、単球は血管内から組織に出るとマクロファージに変化します。
白血球(主に好中球、マクロファージ)は、アメーバのように動いて細菌や死滅しつつある細胞、その他の異物などを取り込み、食べて殺します。
それを貪食作用といいます。
細菌などを取り込んだ白血球はやがて死亡します。
傷口から出る膿(うみ)は、細菌などを取り込んだ白血球の死骸です。
マクロファージは貪食作用が強く、大食細胞ともいわれます。
マクロファージは外敵を食べると同時に、食べた外敵の情報を免疫の司令塔(ヘルパーT細胞)に報告します。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)とは?

NK細胞は白血球のリンパ球の仲間です。
免疫の司令塔の命令や他の白血球との連携がなくても独自に動き、感染した細胞やガン細胞などを攻撃して壊す働きを持つと考えられています。

リンパ球の免疫システムとは?

細菌などの外敵を抗原といいます。
抗原が鼻や口、傷口などから侵入すると、好中球とマクロファージが駆けつけ、抗原を貪食、破壊します。
このとき、マクロファージは貪食した抗原のかけらをヘルパーT細胞(Tリンパ球の一種)に報告します。
マクロファージから報告を受けたヘルパーT細胞は増殖し、他のリンパ球に指令を出します。

液性免疫(抗体による免疫)と細胞性免疫

ヘルパーT細胞はBリンパ球に指令を出し、抗体(免疫グロブリン)を作らせます。
抗体は飛び道具のようなもので、抗原を破壊したり、毒性を中和したります。
抗体が取りついた抗原は、マクロファージによって貪食されます。
このように、抗体によって抗原をやっつける仕組みを液性免疫といいます。
Bリンパ球の一部は、抗原情報を記憶したメモリーB細胞として体内にとどまり、同じ抗原に再び侵入されても二度と発症しないように備えます。
一方、ヘルパーT細胞は、Tリンパ球の一種であるキラーT細胞にも指令を出し、抗原に侵入された細胞を直接壊させます。
この仕組みを細胞性免疫といいます。
抗原がいなくなると、Tリンパ球の一種のサプレッサーT細胞が各免疫機能を抑制し、終結させます。

炎症反応とは?

細菌、ウィルス、外傷、熱傷などによって身体の細胞や組織が障害されると、炎症が起こります。
これは、身体を守るための免疫機構による働きです。
細胞が障害されると、ヒスタミンなどの炎症性物質が細胞から出て、周囲の血管を拡張、血流を増加させます。
毛細血管の透過性が亢進し、血漿(血液の液体成分)にじみ出て皮膚が腫脹します。これを浮腫(ふしゅ)といいます。
疼痛も起こります。
そして、好中球やマクロファージが毛細血管から炎症部位に集まり、傷害された細胞や病原菌を取り込みます。
この戦いによって生み出される黄色の膿(うみ)は、病原菌、好中球などの死骸が混ざり合ったものです。

免疫にかかわる病気

アレルギー

アレルギーは、免疫機能の暴走、誤作動と言えます。
多くの人にとって何事も起こらないような物質、本来は攻撃しなくて良いはずの食品や花粉などに対して過敏に反応し、異物とみなして攻撃してしまいます。
アレルギーは免疫過敏症といわれます。
原因ははっきりしませんが、体質や環境が要因と考えられています。
アレルギーは過剰に起きる免疫反応なので、それを引き起こす抗原となる物質があります。それをアレルゲンといいます。
アレルギー反応で粘膜などにある肥満細胞が刺激され、ヒスタミンなどの物質を放出することで、気管支の収縮や粘液の分泌増加、炎症などが起こります。

気管支喘息(ぜんそく)

イエダニの死骸、ハウスダストなどのアレルゲンを吸入して起こると言われています。
精神的ストレスがきっかけとなることも多いと言われています。
気道に慢性的な炎症が起きて、発作性の呼吸困難、喘鳴(ぜいめい)、咳を繰り返します。

蕁麻疹(じんましん)

アレルゲンとなる食物などが体内に取り込まれ、抗原・抗体反応によって皮膚にかゆみや浮腫が現れます。
短時間で消えることがほとんどですが、ストレスなどの影響で頻発する場合があります。

アナフィラキシーショック

ペニシリンなどの抗生物質、麻酔薬、食物、昆虫毒などに対する急性のアレルギー反応で、血圧低下、顔面蒼白、冷や汗、呼吸困難などが現れ、意識を失うこともあります。

アトピー性皮膚炎

アレルギー反応により、皮膚に強いかゆみ、赤い湿疹、炎症、角質のはがれ、皮膚が厚くなる苔癬化などが生じます。
アトピーという名前は 、「場所が不特定」 という意味のギリシャ語が由来です。
頭や顔、首から始まることが多く、肘や膝の関節の内側など手足や身体全体に広がります。 ハウスダスト、イエダニ、花粉、動物の毛、食べ物などがアレルゲンと考えられています。
多くは乳幼児期に発症しますが、成人になって発症することもあります。
病院の指導・治療としては、生活習慣や環境を改善し、アレルゲンを出来るだけ除去します。
皮膚を清潔にして、保湿するスキンケアを行います。
皮膚の炎症・痒みに対してステロイド薬、抗ヒスタミン薬などを投与します。

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