鼻・口・喉から声帯までの気道(上気道。気管支は下気道)にウィルスや細菌が感染し、炎症が起きた状態を「かぜ症候群」または「感冒」「急性上気道炎」と呼びます。
原因となる風邪ウィルスの種類は無数にありますが、インフルエンザ(インフルエンザウィルスに感染)と、普通感冒(その他のウィルス、細菌に感染)とに大きく分けられます。
普通感冒
普通感冒(かんぼう)では、のどの痛み、咳、くしゃみ、鼻水、発熱、頭痛、食欲の低下、倦怠感などの諸症状が現れます。
ウィルスの種類によって、腹痛、嘔吐、下痢をともなうなど、症状の表れ方が変わります。
【ウィルス性の風邪の病原体】
ライノウィルス
アデノウィルス
コロナウィルス(SARSはコロナウイルスの新種)
インフルエンザウィルス
【細菌性の風邪の病原体】
マイコプラズマ(マイコプラズマ肺炎を引き起こします)
レンサ球菌(小児に多い)
溶連菌(赤い発疹が見られることがある)
インフルエンザ(流行性感冒)
インフルエンザは、かぜ症候群のなかでも流行・感染しやすい病気です。
普通感冒よりも感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)が短く、強い症状が現れ、心不全などを併発して死に至るケースもあります。
せきなど一般的な風邪の症状から始まり、高熱、筋肉痛や関節痛の症状が現れます。
インフルエンザウィルスは、少しずつ形を変える(変異)ため、抗体(一度感染したウィルスを記憶し、次回は即座にやっつける免疫機構)ができても、次の流行時には再び感染してしまいます。
インフルエンザウィルスは、A・B・C型の三種類がありますが、流行するのはA型のソ連型・香港型とB型です。
(ソ連型、香港型というのは、ウイルスが見つかった場所、土地の名前が由来)
病院では、抗インフルエンザ薬として、タミフル、リレンザ、イナビルなどが処方されます。
多くの場合、発症して3日目以降にはウィルスが体内で減り始めるので、早期(48時間以内)に服用し始めないと十分な効果が得られません。
なお、毎年冬場に流行しているインフルエンザは、インフルエンザウィルスによるものですが、インフルエンザ菌というものも存在します。
インフルエンザ菌は肺炎、気管支炎、副鼻腔炎などの原因となることがありますが、インフルエンザウィルスとは全く別のもの(ウィルスではなく細菌)です。
細菌とウィルスの違いは?
かぜ症候群の話とはずれますが、細菌(ばい菌)とウィルスの違いについて記載します。
・大きさ
細菌は1~5μm(マイクロメートル:mmの1000分の1)
ウィルスは20~970nm(ナノメートル:1mmの100万分の1)
ウィルスは細菌より極端に小さく、電子顕微鏡でないと見ることが出来ません。
細菌は光学顕微鏡で見ることができます。
・細胞
細菌は自分で細胞を持っていて、栄養を取り込んでエネルギーを生み出し、増殖することができます。
ウィルスは自分で細胞を持っておらず、他の生物の細胞に侵入し、その細胞に自分のコピーを作らせることで増殖します。
食中毒を起こす細菌は、調理した食べ物の栄養で増殖できますが、ウィルスは生きた生物の細胞に侵入しないと増殖できません。
・抗生物質
細菌は自分の細胞を持っているので、その細胞を攻撃する薬(主に細胞膜を壊す作用がある)を作ることが出来ます。
それが抗生物質です。
一方、ウィルスは人間の細胞に侵入するので、攻撃する薬を作るのは困難です。
ウィルスを攻撃しようとすると、人間の細胞も破壊してしまうからです。
抗ウィルス薬は、ウィルスを直接攻撃するのではなく、その増殖を抑えるものです。
抗生物質は、ウィルスには効果がありません。
なお、細菌もウィルスも膨大な数の種類がありますが、そのほとんどは人間に病気を起こしたりしないものになります。