甲状腺とは?
私たちは、口から空気を吸い、食物を食べます。
口から入った空気は、喉(のど)のところから「気管」に入り、肺に向かいます。
食物は食道に入り、胃腸に向かいます。
喉のところで分岐する気管と食道は、気管が前側、食道が後ろ側(背中側)に位置しています。
甲状腺は、のどぼとけの辺りで気管にくっついてる、長さ3~5 cm程度の器官です。
前から見ると、蝶が羽を広げたような形をしています。
甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌します。
甲状腺ホルモンは、身体の新陳代謝を活発にするホルモンです。
全身の細胞に作用して、細胞の呼吸量、エネルギー産出量を増大させ、基礎代謝量を促進します。
脳の直下、脳にぶら下がっているように見える器官「脳下垂体」から、甲状腺刺激ホルモンが分泌されます。
甲状腺刺激ホルモンは血液の流れにのって甲状腺に向かい、その作用で、甲状腺が甲状腺ホルモンを分泌します。
甲状腺ホルモンの分泌量は、脳下垂体(甲状腺刺激ホルモンの分泌量)によって調整されているといえます。
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起こり、硬く腫れる病気です。
甲状腺が腫れて、表面にコブや粒状の腺腫(両性の腫瘍)ができます。
女性(特に中年の女性)がかかることが多い病気です。
原因は、自己免疫疾患とされています。
本来は異物(細菌など)に対して起きる免疫反応が、自分の体(器官)に対して働いてしまうのが自己免疫疾患です。
それが甲状腺に対して起こり、免疫反応として炎症が引き起こされます。
腺腫が小さい、軽い橋本病の場合は、ほとんど自覚症状が表れません。
甲状腺の機能が低下していなければ、治療の必要はなく、経過観察になります。
症状が進行すると、甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが欠乏してしまいます(甲状腺機能低下症)。
甲状腺機能低下症
甲状腺の働きが悪くなり、甲状腺ホルモンの分泌量が低下し、全身の代謝活動が低下してしまう病気です。
多くの場合、橋本病が長期間に渡ることで起こります。
女性がかかることが多い病気です。
甲状腺機能低下症になると、眠気が出る、便秘になる、寒がりになる、顔に浮腫(むくみ)が出るなどの症状が現れます。
欠乏している甲状腺ホルモンを投与して、症状を改善させる治療が行われます。
甲状腺機能低下症は、下記のどちらかの原因によって起こります。
①橋本病の進行などによって甲状腺が破壊される。
②甲状腺をコントロールしているホルモン(甲状腺刺激ホルモン)に問題がある。
②の場合、甲状腺刺激ホルモンを分泌している下垂体の働きに障害がある、ということになります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌される病気を、甲状腺機能亢進症といいます。そのほとんどが、バセドウ病(バセドー病)です。
全身の代謝が過剰に促され、食欲が増進し、沢山食べる割に体重が減る。全身に汗をかく。疲れやすくなり、動悸を感じる。排便の回数が増える。手、足、全身に震えが出る(振戦)。精神的なイライラ感、集中力の低下。などの症状が現れます。
眼球が飛び出る症状が現れる場合もあります。
甲状腺刺激ホルモンと似たような作用をする抗体(抗TSHレセプター抗体)が、血液中で作られることが、バセドウ病の原因です。
甲状腺ホルモンの分泌量は、本来は脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンによってコントロールされます。
しかし、それと似たような作用をする抗体が甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されてしまいます。
治療法としては、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を服用し、甲状腺ホルモンの量を調整します。
抗体が消えない場合は、アイソトープ治療か手術を行います。
アイソトープ治療は、放射性ヨードを服用し、甲状腺の細胞量を減らすことで、甲状腺ホルモンの分泌量を減少させます。
手術より手軽ですが、放射性物質をしようするため、被爆の影響が全くないとは言えず、年齢や妊娠の有無などによって選択します。
手術は、甲状腺の一部を残して切除する方法です。