うつ病

うつ病とは

何となく気分が落ち込んだり、憂鬱な気分になったりすることは、誰にでもあることです。
しかし、気分の落ち込みが長く続き、日常生活に支障をきたしている場合は、うつ病の可能性があります。

うつ病と、通常の気分の落ち込みとの区別は難しく、はっきりとした境界線があるわけではありません。
また、うつ病はいわゆる「精神力」、精神の強さとは関係なく、誰でもかかる可能性があります。

うつ病になると、気持ちを切り替える、休養をとる、といった対応で治すことは困難になります。
うつ病を放置していると、不安感、イライラ感、悲哀感といった感情が表れ、人に会いたくない、自信が持てない、根気が続かない、考えがまとまらないといった状態になりがちです。
色々なことを「やらなければ」と思っていても、意欲が低下して、どうしても思うように行動できません。
怠けていると見られたくなくて無理をしても、エネルギーが少なくて上手くいかず、頑張れない自分を更に責めてしまうという悪循環に陥ります。

また、体調面でも、睡眠障害、過食拒食、疲労感、頭痛、肩こり、腰痛、胃腸の不調、動悸、息苦しいと言った症状を併発する場合があります。

うつ病の原因は?

うつ病になりやすい特徴として、下記のようなことがあげられます。

・責任感が強く几帳面な人は、自分の責任を感じやすく、心を疲れさせてしまう。

・子供時代や成長期に、大切な人からの拒絶や、大切なものの喪失を経験し、その影響でネガティブな考えや無力感を持つ傾向が強まった。

・学校や職場でのいじめ、リストラなどによるストレス。親しい人の死など悲しい出来事の影響。

・職場での昇進、結婚や出産といったことがプレッシャーとなって発症する。

セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン

人の精神活動は、脳神経細胞(ニューロン)の間で行われる情報伝達によってコントロールされていると言われています。
神経細胞同士は直接接触するのではなく、細胞間のわずかな隙間に神経伝達物質を放出して情報を伝えます。
感情、気分に関係すると考えられる情報伝達物質が、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンです。

セロトニンは、感情を適度に抑制し、行動が行き過ぎたりしないようブレーキをかける役割があります。
ノルアドレナリンは、活動を高め、維持する役割を担います。
ドーパミンは、やる気を出して行動するように働きかける役割です。

こうした神経伝達物質が何らかの原因で不足すると、神経細胞間の情報伝達が上手くいかなくなり、うつ病を引き起こすと考えられています。
そこで、うつ病の治療薬として、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの放出量を増やす抗うつ薬が処方されます。

うつ病の主な症状

・抑うつ気分
気分が落ち込む、憂鬱、哀しいなどの抑うつ的気分が表れます。
また、いら立ちや気まぐれ的な行動など、外に対する攻撃的な状態になることもあります。

・気力の減退、疲労感
何かをしようとしても気力が湧いてこなかったり、非常に疲れやすくなったりして、日常生活をすることにも支障がでてきます。
頑張ろうとしても上手くいかず、更に自分自身を情けなく感じてしまいます。
気力が低下して社会や他人との関わりを忌避するようになると、いわゆる「引きこもり」が始まることもあります。

・興味、喜びの喪失
今まで興味をもっていた趣味などに無関心になったりします。
何事にも喜びを感じなくなり、性的な欲求も著しく低下します。

・自分の価値が感じられない、自責感
失敗を自分の責任だと悔んだり、過去の失敗を思い出したりして、自責の念に悩みます。
そすると、自分が何の価値もない人間だという思い込みに支配されるようになります。

・集中力、判断力、記憶力、注意力の低下
小さな問題でもあれこれと悩んでしまい、集中力が続かなくなります。
仕事の能率が下がったり、学校の成績が落ちたりします。

・自殺念慮、自殺企図
うつ病が酷くなると、自分の無価値観や自責の念が強くなり、自殺を考えたり、自殺を図ったりする場合があります。

・極端な食欲の増減、不眠または睡眠過多
うつ病では、精神的なストレスから体調にも変調をきたすことがあります。
極端に食欲が減退して、何を食べても美味しく感じられなくなったり、逆に甘い物やごはんなどを大量に食べ続けたりする場合があります。
また、睡眠の状態が悪くなり、なかなか寝付けなかったり、夜中に目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまったりすることがあります。
逆に、睡眠時間が極端に長くなり、どれだけ寝ても寝足りない状態になる場合もあります。

・症状の日内変動、季節変動
朝は症状が悪化し、夕方から夜にかけては改善するなど、一日の間でも気分の波があります。
また、春に症状が強まり、夏には治まるなど、季節によって気分が変動する場合もあります。

産後うつ病・マタニティブルー

赤ちゃんが生まれて嬉しいはずなのに、急に悲しい気持ちになったり、涙もろくなったり、イライラ、睡眠障害が起こったりします。
初産を迎えた妊婦の50~80%が、マタニティブルーにかかるといわれます。

ほとんどの場合は10日から2週間もすれば自然と治るといわれていますが、症状が長引き、悪化する場合もあります。
出産や慣れない育児による疲労、プレッシャー、孤独感、睡眠不足などが原因と考えられます。

また、妊娠中は胎盤で各種ホルモンが作られていますが、出産時に胎盤は排出され、ホルモンが急激に減少します。
その変化に体がついていけず、一時的に情緒不安定になることも考えられます。

産後うつ病
が重くなると、疲労感、落ち着きのなさ、罪悪感、自己無価値観、集中力の低下、不眠や自殺願望、更には幻覚や妄想を抱くこともあり、まれに自分の子供に危害を加える危険性が生じることもあります。

月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)

月経が始まる前の時期に、乳房の張りや痛み、腹痛、頭痛、吐き気などの不快症状が表れることを「月経前症候群(PMS)」といいます。
それが更に重症になった場合を「月経前不快気分障害(PMDD)」といいます。

PMDDの特徴は、日常生活に支障をきたすほどの気分の悪化です。
自分でコントロールできない程の怒りや不機嫌に陥る場合もあります。
その他にも、うつ気分、不安や緊張、イライラ感、急に涙が出て来る、焦燥感、倦怠感などの気分的症状が表れます。
身体的症状としては、酷い筋肉痛や関節痛、腹痛、頭痛などがあります。

躁うつ病(双極性障害)

うつ状態だけでなく、そう状態の時期が交互に表れる症状を躁鬱病(そううつ病)、双極性障害といいます。

そう状態とは、気分の異常な高揚が続き、気が大きくなって何でもできる気分になり、睡眠欲求の減少、多弁、注意散漫、活動の増加などが表れます。
本人は快くても、周りとのトラブルを引き起こすことが多く、イライラ感が強く出たり、そうの後に気分の落ち込み(うつ)が酷くなったりする場合があります。

双極性障害の「双極」とは、そう状態とうつ状態という、気分の二つの極を意味します。
そう病とうつ病の症状が、年間に4回以上交代して表れる状態を、急速交代型の気分障害といいます。

コメントは受け付けていません。